Teatown’s blog - Art Room

アートと建築関連のつぶやき

レクチャー「《洛中洛外図屏風》:17世紀の京のようす」@ARTIZON美術館

来年オープン予定のARTIZON美術館(旧ブリジストン美術館)で、オープン前の特別企画レクチャー「《洛中洛外図屏風》:17世紀の京のようす」に参加してきました。

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ARTIZON美術館外観

この洛中洛外図屏風は、改装のための閉館中に手に入れたものの一つだそうで、2006年頃に個人で所蔵していたのが分かって世に出てきたもなのだそうです。右隻には内裏から東寺までの京の東側、左隻には鞍馬から二条城、壬生寺までの西側が描かれてます。右隻には、祇園祭山鉾巡行が書き込まれていて、鉾や山を一つづつ拡大して解説してくれました。実物は非常に細かく書き込まれているので、学芸員の人達も高精細写真を撮り拡大して研究してるんだそうです。


館内撮影自由だったので、オープン前の館内を色々撮ってみました。

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ARTIZON美術館内部

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ARTIZON美術館内部

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ARTIZON美術館 カフェテリア

正式開館時にはまた装飾など加わって変わっていると思いますが、開館前の姿という点で貴重かもしれません。



みんなのミュシャ展@Bunkamura The Musium

今日はもうひとつ、渋谷のBunkamura The Museumで行われている「みんなのミュシャ展」へ行ってきました。
 
 
ミュシャと言えばこの間壮大な「スラブ叙事詩」の連作を見たなぁと思いましたが、調べてみると、2年前のことでした。月日の経つのは早いなぁ。
 
この展覧会は、スラブ系はほぼなしで、有名なGismondaのポスターから、欧米プログレ/ロックバンドのジャケットやMARVELのアニメや、日本の少女漫画やファイナルファンタジーへと、ミュシャの様式が変遷を経て進化する様を見ることになります。ミュシャは、ベルエポックのパリでアール・ヌーボーの最先端として有名になっていくわけですが、そこには、当時の日本の美術がしっかりと影響を与えているわけです。いうなれば、江戸時代の日本の美術の様式が、ミュシャを経て欧米で咀嚼・昇華され、また、日本へ戻ってきてさらに進化を迎えるという、スパイラルな循環を見て取れますね。
 
サラ・ベルナール(Sarah Bernhardt)を描いたGismondaのポスターは、クリスマスシーズンで描いてくれる画家がいない中でミュシャに話が回ってきたという幸運があったようですね。これで、CP/MMS-DOSの話を思い出しました。(*1)
 
ミュシャが確立した円環の中に女性を描いて髪の毛などが空間を舞い円環からはみ出るような構図は、ミュシャ様式と言われているようですが、Q様式とも言われているようです。
 
ミュシャに始まった様式が世界中を渡り歩き変遷を経て現代アートやアニメの世界に大きな影響を与えているのは、今回の展示会で初めて認識しました。普段何気なく見ているものも、こういうミュシャ様式を感じ取るように見ると面白いですね。
 
*1 IBMがPCのOSの作成の依頼をCP/Mを作っていた会社にしたが、社長が不在(バケーション)でIBMからの依頼に答えられない中、ビルゲイツがいち早く対応して、IBMMS-DOSを採用したことで、今のMS帝国があるという話。当時はそう聞いていたけど、そこまで簡単な経緯ではなかったようですが。

塩田千春展@森美術館

今日は六本木森美術館で行われている塩田千春展に行ってきました。
 
塩田千春は初期の頃は、体を張った人間自身を中心としたインスタレーションをしてましたが、徐々に糸を空間に張り巡らした形式へと変化したようです。「不在の中の存在」というのが彼女の一貫したテーマですが、空間の中の痕跡にフォーカスを当てているのでしょうか。赤い糸の作品は船、黒い糸の作品は朽ちた椅子とピアノと結びついていて、対象のオブジェクトから空間に染み渡る記憶の痕跡を表してるんですかね。オブジェクトの存在がのちに空間に染み出して一体化していく様のようにも見えます。それを千春の記憶場とでも名付けようかと思ったり。(笑) 最後のコーナーは古風な旅行鞄が沢山天井からぶら下がっていて、天に昇っていく坂道/階段のようにも見えますね。中々考えさせてくれる空間でした。
 
以下、本展覧会の関連リンクです。
 
森美術館「塩田千春展:魂がふるえる」参考資料映像:Bloomberg Television《ブリリアント・アイデア

www.youtube.com

 

塩田千春の圧倒的なインスタレーション空間へ。

casabrutus.com

松方コレクション展@国立西洋美術館

今日は、国立西洋美術館で開催されている松方コレクション展へ行ってきました。

 

この展覧会は2016年に発見されたモネの「睡蓮、柳の反映」のデジタル修復が見られることで話題になってます。モネ以外にも20世紀初頭の有名どころを大量に購入した松方コレクションの凄さが分かる展覧会でした。こんなのも持ってたのかという驚きが多々ありました。

 

コレクションの内容も素晴らしいですが、そもそもこの松方幸次郎という人がなぜこんなにすごいコレクションを持つに至ったのかという背景が分かって面白かったです。川崎造船所社長として第一次世界大戦で輸送船の需要が増えるというのを見越してロンドンをベースに売り込みを図り財を成したというのは、期を見るに敏であったということで、経営者としての際があったということだと思います。そして、その財を元に西洋美術の本物を収集し日本に持ち込んで、日本美術の向上に寄与するべく、美術館を作るという構想を持っていたとのことです。そういう志を成功者が持って実行していたのは素晴らしいことだと思いました。とはいえ、海軍からドイツの潜水艦の設計図の入手を頼まれていたという話もあり、絵画購入が実はそういう目的の隠れ蓑だったのではという観測もあるようで、まぁ、さもありなんという気もします。その後、戦争が終わり需要激減で川崎造船所は経営破綻に至り、松方コレクションも散逸してしまったのは残念な出来事でした。欧州に残った松方コレクションは、ロンドンの倉庫の火災や第二次大戦後フランスで敵国資産として接収されたりと受難の歴史を経ました。その後フランスから返還されたというのも凄い話ですが、フランスが幾つか手放さなかった(返還しなかった)絵もあるのですね。西洋美術館建設はフランスからの松方コレクションの返還の条件の一つでもあったとのことです。

 

こういう背景も踏まえながら、素晴らしいコレクションを鑑賞してきました。

 

artexhibition.jp

クリムト展@東京都美術館

東京都美術館で行われているクリムト展を見てきました。

klimt2019.jp

 

ベルエポックのパリ同様、ウィーンにおいても日本絵画の影響がこんなにも強く表れていることに再度驚きです。クリムトの金を多用したスタイルや市松模様のようなパターンの活用などまるで琳派のウィーン解釈と言ってもいいのではないかと思いました。多分に浮世絵のモチーフや構図の影響もあり、琳派と浮世絵を融合し再解釈したかのような印象を受けました。

Meet the Collection展@横浜美術館

今日は横浜へ出かける用があったので、ついでに横浜美術館のMeet the Collection展を見てきました。

 

yokohama.art.museum

 

横浜美術館は前から企画展の時に一緒に見ることが出来る常設展のクオリティの高さを感じていたので、今回も期待してました。

 

有名どころだと、セザンヌマグリットマン・レイサルバドール・ダリピカソリキテンスタインカンディンスキー奈良美智、等々、あります。個人的には日本画鏑木清方の絵が充実しているのが気に入ってます。他にも下村観山を集中的に収集しているようです。(今回はあまり展示されてませんでしたが。)

 

今回は、収蔵品の他に、数名のアーティストのインスタレーション等も交えて展示しており、中々見ごたえがある展示会になっていると思います。

 

マックス・エルンストの「少女が見た湖の夢」は、まるでDeep Dream Generatorの絵のようでした。

ウィーン・モダン展@国立新美術館

今日は令和最初の美術展ということで、国立新美術館で行われているウィーン・モダン展へ行ってきました。

 

artexhibition.jp

 

クリムト、シーレ、世紀末への道」という副題から、ウィーン分離派の展覧会だと思ってましたが、それは、ごく一部で、むしろ、ウィーンで花開いた19世紀末周辺の絵画、家具など工芸デザイン、建築と様々な角度からモダニズムへの活動を紹介するものでした。実に興味深く、幸い今日は空いていたので、じっくりと見て回ることができました。

 

知らなかったのですが、19世紀後半にウィーンは、城壁を取り払い、いわゆる環状道路を作って、都市の大改造をしているのですね。この元城壁だったところにできた「リンク通り」による交通革命でウィーンは市域が拡大し発展を遂げたようです。時の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の英断と言えるのでしょう。

 

最後の方にやっと登場するエゴン・シーレ。なんだか彼の強烈なタッチには、ベクトルは違うけど、ゴッホのような凄さの片鱗を見た気がしました。