Teatown’s blog - Art Room

アートと建築関連のつぶやき

浮世絵風景画展@町田国際版画美術館

今日は町田市立国際版画美術館で行われている「浮世絵風景画展 広重・清親・巴水 三世代の眼」展に行ってきました。

江戸の歌川広重、明治の小林清親、大正・昭和の川瀬巴水というそれぞれの時代を代表する絵師の風景版画を一堂に鑑賞することができる貴重な美術展でした。川瀬巴水の版画は横浜美術館でも今まで結構見ていたのですが、今回、広重、清親と一緒に見ることができるのはとても良い体験でした。

hanga-museum.jp

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町田国際版画美術館1Fのポスター

最初のコーナーは、同じ場所を描いた3人の風景版画を並べて鑑賞できる空間で、それぞれの作者の味わいを感じることができます。そんな中で、やはり、巴水の夜景と雪景色の質感に圧倒されました。

次の広重コーナーでなるほどと思ったのは、「東海道五十三次之内」時代では横の構図だったのが、江戸後期に風景版画を冊子形態で売るようになってからは、流通の観点で便利な縦の構図が用いられるようになり、そこで遠近感を出すため、手前に近景のものを大きく書いて背後に遠景を描くという手法が工夫されたそうです。確かに「名所江戸百景」を見るとそういう構図のものが多いです。例えば、ゴッホも模写したというので有名な以下の「亀戸梅屋舗」はまさにそういう構図ですね。

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名所江戸百景 亀戸梅屋舗 (作:歌川広重)

小林清親の風景版画は明治の風情が感じられます。江戸と西洋が共存しているような黎明期の息吹を感じますね。現存していない建物など、興味深いです。そんな清親も晩年は、広重風の江戸の風景画に回帰していったようです。

さて、最後は川瀬巴水のコーナーです。個人的に大変好きなのですが、これだけまとめて見られて大変満足しました。上でも書いたのですが、やはり、巴水の静謐な夜景・雪景色に見入ってしましました。巴水は旅行が好きだったようで、日本全国と朝鮮の風景をたくさん風景版画に残しています。素晴らしいものだらけだったのですが、個人的には「佐渡夷港」「秋田八郎潟」「平泉中尊寺金色堂」あたりがお気に入りです。

ところで、川瀬巴水といえば、Steve Jobsも好きでコレクションしていたというのが話題ですね。

www3.nhk.or.jp

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広重、清親、巴水という三巨匠の風景版画を堪能できるとても良い美術展でした。図録も購入しましたが、なかなか良い資料だと思います。