デイヴィッド・ホックニー展@東京都現代美術館
芸術x力 ボストン美術館展 @ 東京都美術館
東京都美術館で開催中の「芸術x力 ボストン美術館展」に行ってきました。
この展覧会は2020年に計画されていたものが二年越しにやっと実現したそうです。
目玉は、日本にあれば国宝間違いなしという二つの絵巻物「平治物語絵巻」と「吉備大臣入唐絵巻」です。「平治物語絵巻」では、炎の描写や武者などの表現をじっくり鑑賞しました。井戸に女御が身を投げたというのも描かれてます。「吉備大臣入唐絵巻」では、空を飛んで試験の内容を聞きに行くというズルをするところを描いてあったりなかなかユーモラスな内容です。それから、大火で焼けた御所から避難した仮御所から再建した御所へ戻る大行列を描いた「寛政内裏遷幸図屏風」も見応えありますね。
皇帝ナポレオンの最初の皇妃ジョゼフィーヌのために作られた食器セットも素晴らしかったです。マージョリー・メリウェザー・ポストのエメラルドのブローチは、大きさと装飾に圧倒されます。その他にも色々なジャンルの美術品が展示されていて、ボストン美術館の所蔵品の凄さを感じました。
ところで、グッズ売り場には二年前に作ってしまった図録(2020年版)も売っていました。コロナ禍の苦労の跡を垣間見た気がします。
自然と人のダイアローグ展@国立西洋美術館
今年リニューアルオープンした国立西洋美術館の最初の展覧会「自然と人のダイアローグ展」がそろそろ終わりそうということに気がついて、急遽行ってきました。
この展覧会は、ドイツのフォルクヴァング美術館と西洋美術館の所蔵品をテーマに合わせて併置するという企画になっています。双方、よいものを持っているなと思いました。中でも、ポール・シニャックの2点とテオ・ファン・レイセルベルへの「メールの月光」はなかなか気に入りました。(点描画好きだからですが。)あと、ゴッホの「刈り入れ」ですかね。
ちなみに、この展覧会は、一部を除き写真撮影OKというのは良いなと思いました。海外の美術館は大抵写真撮影OKなので、それに合わせたということだと嬉しいです。
ところで、国立西洋美術館はリニューアルで前庭が大きく変わりました。以前は結構樹木が鬱蒼としてましたが、一切なくなり、彫刻以外はなくすっきりとした空間になってました。世界文化遺産に登録された際に、ル・コルビュジエの設計当時の意図が損なわれているという批判があったので、元の形に戻したということのようです。
浮世絵風景画展@町田国際版画美術館
今日は町田市立国際版画美術館で行われている「浮世絵風景画展 広重・清親・巴水 三世代の眼」展に行ってきました。
江戸の歌川広重、明治の小林清親、大正・昭和の川瀬巴水というそれぞれの時代を代表する絵師の風景版画を一堂に鑑賞することができる貴重な美術展でした。川瀬巴水の版画は横浜美術館でも今まで結構見ていたのですが、今回、広重、清親と一緒に見ることができるのはとても良い体験でした。
最初のコーナーは、同じ場所を描いた3人の風景版画を並べて鑑賞できる空間で、それぞれの作者の味わいを感じることができます。そんな中で、やはり、巴水の夜景と雪景色の質感に圧倒されました。
次の広重コーナーでなるほどと思ったのは、「東海道五十三次之内」時代では横の構図だったのが、江戸後期に風景版画を冊子形態で売るようになってからは、流通の観点で便利な縦の構図が用いられるようになり、そこで遠近感を出すため、手前に近景のものを大きく書いて背後に遠景を描くという手法が工夫されたそうです。確かに「名所江戸百景」を見るとそういう構図のものが多いです。例えば、ゴッホも模写したというので有名な以下の「亀戸梅屋舗」はまさにそういう構図ですね。
小林清親の風景版画は明治の風情が感じられます。江戸と西洋が共存しているような黎明期の息吹を感じますね。現存していない建物など、興味深いです。そんな清親も晩年は、広重風の江戸の風景画に回帰していったようです。
さて、最後は川瀬巴水のコーナーです。個人的に大変好きなのですが、これだけまとめて見られて大変満足しました。上でも書いたのですが、やはり、巴水の静謐な夜景・雪景色に見入ってしましました。巴水は旅行が好きだったようで、日本全国と朝鮮の風景をたくさん風景版画に残しています。素晴らしいものだらけだったのですが、個人的には「佐渡夷港」「秋田八郎潟」「平泉中尊寺金色堂」あたりがお気に入りです。
ところで、川瀬巴水といえば、Steve Jobsも好きでコレクションしていたというのが話題ですね。
広重、清親、巴水という三巨匠の風景版画を堪能できるとても良い美術展でした。図録も購入しましたが、なかなか良い資料だと思います。
イサム・ノグチ発見の道@東京都美術館
「#映える風景を探して」展@町田市立国際版画美術館
今日は、町田市立国際版画美術館でやっている「#映える風景を探して 古代ローマから世紀末パリまで」という展覧会に行って来ました。
実はこれ前から行こうと思ってたのですが、先月の緊急事態宣言で軒並み美術館・博物館が閉鎖されて、すっかり忘れてました。ちょうど今週やっていた「ぶらぶら美術・博物館」で町田特集があって、思い出したわけです。
このタイトルにもなっている「映える風景」と言うのは、18世紀に始まったPicturesqueという概念だというのがこの展覧会の趣旨なんですね。Picturesqueな風景を求めてスケッチをするのが当時の流行りだったようで、スケッチに夢中で川に落ちるとか、当時すでにそういう風刺画があったようです。Instagramに載せる目的で写真を撮る現在の風潮も、18世紀のPicturesqueの焼き直しと見ると面白いですね。
版画美術館だけに、展示品はほぼ版画です。ぶら美でも取り上げられていたレンブラントの「三本の木」ですが、右下に人の形があるのをなんとか確認できました。これは、言われないと分からないくらい微妙に刷り込まれてます。当時の版画は、今で言う写真の役割で、記録の意味があったのですね。そういう観点で、ナポレオンのエジプト遠征の後に出版された「エジプト誌」の版画による記録は素晴らしいものでした。多色刷りのは特にですが、稠密なドットからなる壁面の様子など近寄って見てみると感動を覚えました。
あと、パリ万博の時に作られたエッフェル塔とその周辺の会場の鳥瞰図も興味深いものでした。
最後のコーナーでは、写真が使われて記録の地位を脅かされた版画ですが、むしろ世界をそのまま撮しとる写真ではなく、作家のフィルターを通して記録できる版画を見直そうと言う腐食銅版画家協会の活動が紹介されていました。時代に応じて意味合いを変えて来た西洋版画の歴史が窺い知れる展覧会だと思います。